もろつかを語る
(諸塚村を視察訪問された方のご意見)

 諸塚村を訪問いたしました折には、懇切丁寧にご説明、ご案内いただきありがとうございました。

 前々日の日田での木偏サミットで、課題として今後協力して取り組むことを決めました点を、諸塚ではすでにいくつかの点で先取りをしておられるのを見て、感心いたしました。又夜の交流会で、説明されたことが本音でもその通りであることが分かり、さすがFSC認証を受けられた場所は違うなと実感しました。

 今回の訪問は時間が十分でなく、その良さの実態を十分確認することができない面もあり残念な感もいたしましたが、我々にとっては大きなな成果が得られたと思っています。

 諸塚村は今後ともその良さを発揮されて、日本の代表的な持続可能な森林を維持発展されるものと確信しております。

 FoEジャパン事務局

 先日は、刺激的なお話しをありがとうございました。3日間にわたり諸塚村の役場や住民の方に貴重な時間を提供いただきお話しを伺ったことに関する感想をお送りします。

・自治公民館と役場行政や議会との相互関係やあり方について、民主主義や機能・役割の点で、改めて考え方を整理する必要性を認識しました。
 現代の先進諸国は行政国家・職能国家の性質をもっているので、国や地方自治における行政(役場)は複雑で専門的な情報を「独占」する傾向があるため、住民や議会に対して優越した立場にあると言われています。その行政を統制・コントロールして住民の生活や福祉を向上させる方向で政策を決定・実施することはなかなか困難である面があります。教科書的に、絶大な権力や影響力をもつ行政を適切に統制する役割は議会にあるというのは正論ですが、それだけでは不十分で複合的であることが求められているようです。そうすると、市町村の政策決定や政策実施においては、諸塚村の自治公民館のような制度は議会に加えて重要な役割・機能を担うことが期待されている。さらに諸塚
志伝会のような(公民館などの)地域・エリアを超えた横断的・機能的組織やNPOなどの役割・機能も期待されている。市町村政府(自治体)の政策決定・政策実施においては、行政・議会・NPO(的組織)・地域自治組織の相互作用や役割・機能のどれが欠けても充分でないのではないか、といったことを再度ばくっと考えました。
 その中身の考察はこれからですが。

・行政の職員(とくに専門職職員、1級建築士はもちろん、保健師、公立学校の教師など)でもあり、同時に地域に生活する住民でもある公務員は、地域づくり・まちづくり政策(保健福祉も含む)において、行政と住民・地域との間・結節点で重要な役割・機能を担うことが求められているし担わなければならない存在であるということを再認識しました。

・自治公民館も機能的組織・NPOもいずれにおいても、その参加者は、まずしっかりと学習しなければならないし、噛み合った建設的な議論・討論をし、その上で実行することが求められていることも再確認しました。その点でも自治公民館のシステムや伝統・蓄積はすばらしい「社会資源」であると思いました。

・その「社会資源」である自治公民館のシステムを地域住民の中に維持・蓄積し発展させる上で、なによりも地場の文化・伝統(神楽)とスポーツの果たす役割が大切であるように思いました。

 100年近く「門外不出」の「園の露」は美味しかったです。またお伺いする機会があれば、「園の露」としいたけのバター焼きと牛肉を飲食しながら、もっと議論ができれば幸いです。それでは、また。

 水谷利亮(高知短期大)

 この度は調査でたいへんお世話になりました。

 これまで地区組織の調査は何回か行ってきましたが、自治公民館の調査は初めてでしたので、たいへん勉強になりました。

 私の専攻である財政学の視点から、特に面白かったのは、自治公民館=道路網の整備=交付税の連関であり、財政面からも自治公民館が諸塚村の基盤になっていると感じました。

 同時に、自治公民館のあり方の議論が始まっており、財政面では三位一体改革の影響を受けるなど、これまでの自治と地域づくりの仕組みを見直し、改革していく時期でもあることが伺えました。

 ただ、他の多くの小規模自治体と比べて、諸塚村には自治と地域づくりの蓄積があり、合併に逃げず、自己努力によって維持していける基盤があると思います。

 自治公民館と民主主義のあり方など、もっとお話したかったこともありますが、またの機会がありましたら、是非お会いできればと思っております。

平岡 和久(高知大学 人文学部 社会経済学科)

 エコツアー大変お世話になりました。
 夜神楽は大変感動しました。もっと遅くまで見ていたかったです。古民家が歩いていける場所にできれば最高ですね。(古民家=空き家なので、それはそれで問題ですね)
 それと、皆さんの元気な笑顔が印象的でした。

 メンバーもいろいろと感じることが多かったようです。今度また集まって、自分なら何ができるかを話し合うことにしています。
 今度は、プライベートで家族と行かせていただきます。第2の古里のような感覚で楽しませていただきたいと思います。3日間、ありがとうございました。

(長崎県)

 森林フォーラムに参加し、そのあとも引き続き諸塚の各地を見せていただきました。本当に得るものが多い滞在でした。わたしがこれまで見てきた山村に対して、諸塚の元気さには衝撃を受けました。山村や林業の関係者にお話を伺うと、だいたいどこでも最後は愚痴になります。諸塚では、ほとんど愚痴らしきものを聞きませんでした。これは本当にすごいことだと思います。どうしてこうなのか、もう一度よく考えてみたいと思っています。

1)南川の集落での神楽練習見学。こんなにもたくさんの若者が参加して、年配者から全員が熱く練習をしているとは!そのとき聞いた「神楽を通じてこそ、息子は父親を絶対的に尊敬できる」ということ、また「神楽をやっていなかった父親が、息子とのコミュニケーションを求めて神楽を始めた」という話に、神楽の効用がよく表れていたと思う。

2)シイタケ専業農家・Nさんのお話。FSCは、始めはよく分からなかったが、最近理解できるようになった。中国シイタケ問題の際、日本産ということを証明できなくて苦しんだ。スギでも同じことが起きうる。認証で産地を明確にすべきだと思った。これがなかったら、おそらくFSCには動かなかった。(これは本来は産地認証の話かも知れないが、こういう受容のあり方もあるのだと感心した)

3)公民館長の全村協議会の会長は、村長と同じぐらい偉いと事も無げに言われたこと。公民館というものが分かったようで分からなかったのだが、これでわかった。

4)山腹に転々と小さな集落がある風景。この村の伝統といまのがんばりが視覚的によく分かる。」

土屋俊幸(東京農工大学)

横浜育ちでそのままムラ組織のない北海道に行ってしまったため、なかなか理解できずにいました。しかし、今回集落までお邪魔して皆さんのお話をうかがい、改めて様々な集落組織の人のつながりの大切さというものを実感することができました。自治やローカルガバナンス等は市民運動とセットとして捉えがちですが、それが偏った見方であることを認識させられたように思います。また何よりも、安心できる人のつながりの中でそれぞれに役割を持って暮らしていけるということの大事さを感じました。
 森林認証という最も先端的な取り組みが、集落を基礎として可能となったということが特に私には驚きでした。これまでのFSC森林認証ははどちらかというと意識ある市民の自発性に依拠しているというイメージがありました。しかし、本当に森林認証を広げ力強い活動にしていくために集落の人のつながりが重要であることを認識し、ここからFSC森林認証の新しい可能性が生まれてくるのではとも思いました。他のFSC取得されたところで、きちんとした集落組織がないため、なかなかひざを交えた議論ができず、広がりをもてないと述懐されていたことが改めて思い浮かびます。

 また北海道の地域活性化は多くの場合Iターン者が重要な役割を果たしており、それが新たな視点による展開を可能とさせる一方で、様々な軋轢を呼び起こすことがしばしばあります。諸塚は地域で生まれ育った人が、そのまま、あるいはUターンして地域づくりに関わっていること、そうした人のつながりの中で創意工夫が生まれ、それをみんなで取り組んでいけるということも驚きでした。

 山村=「保守的」と考えがちでしたが、条件が厳しいがゆえに実は最も革新的な面をもっているのだということを認識させられました。

柿澤宏昭 (北海道大)

 今回、集落にお邪魔させて頂き、また神楽の練習風景も拝見させて頂き、皆さん元気で明るく、地域活性化が人の活性化であることを深く考えさせられました。今度は家族でお邪魔して神楽の本番も見てみたいと思いました。

 齋藤和彦(森林総合研究所)

第三回森林フォーラム(in諸塚)の参加者、講演者の皆さん、そして準備をして頂いた諸塚村森林認証研究会の皆さん、大変お世話になりました。おかげさまで、九州森林ネットワークの設立記念のフォーラムとして、とても有意義なものになりました。私は、次の3つがとても印象的でした。

 一つは、諸塚村が九州で初めてFSCの森林認証を得たことの意義です。森林認証は資源的・生態的・社会的に持続的な管理がなされている森林を第三者機関が認証し、産出された木材にラベリングをして消費者が選択しうる制度です。諸塚村内での森林環境保全意識の高まりと認証材の販売など、今後の諸塚村の地域戦略のツールとして大きな意義と可能性があると思いました。森林認証制度は世界的には90年代後半から、日本では2000年の速水林業取得以降、広がってきました。そうした中で九州で取得事業体がでてきたことは、取得した地域だけへの効果に留まらず、九州全体への適切な森林管理に対する意識向上という点で波及効果もあるのではないか、あるいは当ネットワークの活動にも活かせるように、受け止めたいと思います。その点、諸塚村での取得についてオープンに語って頂き、感謝申し上げます。

 二つ目は、有馬先生の講演ででてきた、「そこそこの」(過剰な要求をしないという意味で)十分満足できる家をきちんと造るために求められると指摘された事項です。木のことを知り、価格も含めて関係者が情報を公開・共有して、山が成り立つような仕組み造りについて指摘されました。ネットワークの会員には、山の関係者から流通・建築関係の方々がいらっしゃいますので、取り組めるし、そのためには今後、少し詰めた議論が必要です。次回のフォーラム(長崎で本年10月頃開催予定)では、この点を意識した企画にしたいです。

 三つ目は、懇親会がとても盛り上がったことです。諸塚村の方々の心暖まるおもてなし、フレンドリーな参加者のトークに加えて、村田さん演奏のケーナの音が山里の雰囲気と参加者皆さんの心意気にとてもマッチしていて、宴が盛り上がりました。来年は村田さんと合奏できるように・・乞うご期待!

佐藤宣子(九州森林ネットワーク理事長 九州大学)