諸塚に関するライブラリー
全国農村サミット2002

首長所感

 「今こそ山村交流を」

諸塚村長 中本正洋

 地球の水は、豊富にあるが、飲める水は極端に偏在している。四半世紀後には人類の半数は水不足に直面するという。

 わが諸塚村では、村内の95%が森林地帯であり、全域で冷たい水が湧き出ている。そのまま水が飲めることを当たり前と思い生活している者として、水不足のニュースに接すると、改めて森林の果たす役割に感謝しなければならないと思い直す、これほど住みやすいところはない。

 それでも、村の人口は減少し続けている。どうやら人間は「火に向かう夏の虫」のように明るいところが好きらしい。定住人口を増やすことは困難だから交流人口を増やすために、農作業体験ツアーに取り組んでいる。次のようなチョッといい話がある。

 築後100年ほどの大きな民家に宿泊した10代の女性が、黒い大きなピカピカの柱や板戸に対面してしびれるような感激を覚えたこと、ゲーム機を持参した少年がストーブのマキを燃す作業に熱中し、とうとうゲーム機に触れずにツアーを終わったこと、以上、二つの小話は、人間にとって自然とのふれあいがいかに大切であるかを物語っている。毎日報道される新聞、テレビのなかで少年の問題、エリート社員の引き起こす問題等ニュースにならない日はない。このままで日本は大丈夫かと疑わざるをえない。

 このことは、人間として生まれてきた以上、どこかの段階で自然とふれあい、自然の厳しさ、偉大さ、たくましさを味わう経験をしなければ解決できないとしか思えない。

 そこで提案したいことは、小学生の一定の時期に山村生活の体験をさせることができた。

 山村の農林家に住み込んで、家畜の世話の手伝いから田畑の手伝いで汗を流し、家族と一緒に夕飯を囲みながら、一日のできごとを話し合う。そうすることにより、汗を流す人がいなければ社会が維持できないこと、自分のことは自分でしなければならないこと、家族は助け合わなければならないこと等を人に言われなくても体で覚えることができる。机の上の学習だけでは不十分なこと、効果や効率ばかり考えることがいいことではないことを発見できる。

 さて、山村には都市の少年を迎える環境が整っている。学校は先生の数の方が多いし、教室も空いている。空き家もあるし、子どものいない家庭も多く宿泊所に活用できる。生活指導や農林作業の指導者も高齢者が元気で人材豊富。

 山村が都市部の悩みの解決に手助けでき、自分たちも生きがいを感じ、活性化につながることになる。

 ここで、大切なことは、山村留学の現状での問題点である。受け入れ側の山村にとって、物心両面の苦労が多すぎることと都市側も安心して任せられないことである。

 そこで、国、県に一枚加わってもらい制度として安住させてほしいと望むものである。

 今回、農村サミットに参加させていただき、個性を出しながら全国の農山村が厳しいなかで自助努力している姿がよく理解できた。全国に共通する課題として、是非「山村留学」を話題にしていただけたら、と初めて参加しての感想である。


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