諸塚村森林認証研究会
Morotsuka Reserch Society
for Forest Certification

シンポジウム
「森林認証の森と家づくり」

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「山に感謝、森を育む家づくり」
〜森林認証住宅の意義を探る〜
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<成果報告>

会場 グランメッセ熊本
日程 平成19年1月14日(日)

開催趣意書

 21世紀も7年目を数える今、日本の山と森が大きな変化の時を迎えています。

 ここ数十年に渡り、違法伐採されたものも含めた外国産木材の攻勢を受け、国内需要の八割近くを外材に席巻され木材価格も需要も下がり、日本の山と林業は存亡の危機に立たされています。その結果、南九州の放置林は30%にも至り、荒れ続ける山の実態は、一般の多くの人々が知るところにまで到っております。

 このような中、国は「新生産システム」を打ち出し、収穫期を迎えた大量の国産材を市場に安定供給するための新たな木材供給システムを打ち出し、山と林業の再生に向けて動き出しました。

 一方で、「森林認証制度」が国内外で幅広く浸透し始めております。
 環境や生態系、林業の存続に配慮して管理されている山を第三者機関が認証し、そこから切り出された木材を「森林認証木材」としてその理念とトレーサビリティーを証明します。

 九州では宮崎県の諸塚村が2004年に、自治体ぐるみとしては日本で初めてFSC森林認証を取得しました。それを受けて私ども「生地の家」職人'ネットワークは2006年にFSCの流通認証であるCoC認証を九州の工務店グループとして初めて取得し、「森林認証の家づくり」の取り組みを始めました。そして今、産地と流通過程の明確な、山と森を守る理念を帯びたこのような森林認証木材による家づくりが、一般の多くの方々の支持を集め始めています。

 このような流れを受けて、森を守り、山と人をつなぐ「森林認証木材の家づくり」が今後ますます一般に普及していくことを願い、シンポジウム「森林認証の森と家づくり」の開催を企画いたしました。

 趣旨をご理解いただき、ぜひご参加・ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

「生地の家」職人'ネットワーク
                  代表 小椋 清市


プログラム
◆ 13:30 開会宣言
◆ 13:35〜13:45 主催者挨拶 

◆ 13:45〜14:30 基調講演
 「森林認証材で森と家づくりがつながる産直住宅の魅力」
               矢房 孝広  諸塚村産直住宅推進室事務局長

 基調講演として、諸塚村の産直住宅の取り組みによって森づくりと家づくりがつながり、自立した山村経済が成立しうることを示しました。国産材の活用が森林保全とつながっていない日本林業界の現実のなかで、品質の良い製品を供給できる持続可能な林業とそれを使った木の家づくりのためには、新しい規格ツールが必要で、その一つとして森林認証がこれからの住宅産業に不可欠の要素になることが提示されました。

◆ 14:30〜15:30 特別講演
 「自由な発想が広がる現し型の家づくり」
               戸塚 元雄  木庸社(国産材プロデューサー・一級建築士)

 戸塚元雄氏は、国産材の普及には実際の家のつくり手としての工務店の現場改革が必要と考え、そのため最も有効なのは国産材の規格化であるという考えを提示されました。実際四国で展開されている国産材の規格材による家づくりの普及型の開発事例の説明をされましたが、それが実用化されつつあるということで、今後がかなり期待されます。

◆ 15:30〜17:20 パネルディスカッション
 テーマ「九州にひろげたい認証木材の家づくり」
  パネリスト  
   小椋 清市  有限会社小椋住宅 代表取締役
   水田 和弘  株式会社ミズタホーム 代表取締役 
   戸塚 元雄  木庸社(国産材プロデューサー・一級建築士)   
   矢房 孝広  諸塚村産直住宅推進室事務局長 
  コーディネーター
   松下 修   松下生活研究所 代表

 パネルディスカッションでは、森林認証の家づくりを展開されている居ャ椋住宅・小椋社長と潟~ズタホーム・水田社長が、山を思いながら、住まい手のためになる家づくり、正直な家づくりをされてきたそれぞれの活動の報告をされました。

 戸塚氏は、国産材の活用が遅れたのは建築業界のためであり、彼らは森林認証では反応しないので、木材の規格化で使いやすい国産材を普及させることが一番山のためになるという考えを提示されました。

 矢房氏からは、違法に近い施業で伐採された木材が出回っている現状では、建築業界だけの都合で国産材が普及しても山が放棄され、荒れるばかりで良材を生産できる山が育たない。個人の家づくりの関心は、決して山にないのではなく伝えていないからで、山主もお金を儲けるだけでなく、木を育てる喜びがあれば山に手を掛けるようになる。そのためにも規格材にも森林認証という考えを組み込み、山とつながっている木材を差別化することで、逆に問題の本質が見えてくるという主張でした。

 諸塚村の産直住宅のように顔の見えるこだわりの家づくりだけでなく、戸塚氏の唱える規格製品による普及型の家づくりも、さらに巷で一般的な大壁の在来工法でも、環境を守る森林認証による、品質も良く住まい手のことを考えた製品が使えるようになってはじめて、家づくりと森づくりがつながることになると思います。

 今後の森林認証の家づくりの大きな鍵となるのは、やはり都市と山村の連携=森づくりと家づくりのつながりです。今回の都市側で行なった建築現場からの意見を中心にしたシンポジウムの内容をふまえた上で、「山の叫び」を主眼にした宮崎県日向市の森林・木材認証フォーラムに期待したいところです。

◆ 17:20〜17:30 質疑応答 

◆ 17:30 閉会         ◇ 18:30  懇親会

講師プロフィール

基調講演・パネリスト  矢房 孝広(やぶさ たかひろ)氏     1962年生

宮崎県諸塚村企画課長補佐兼産直住宅推進室事務局長
1985年九州大学建築学科卒業後、10年間建築設計事務所勤務。1995年Uターンして諸塚村役場へ入庁。1996年、諸塚村産直住宅プロジェクトに参加し、地域材を用いた環境に優しい家づくりを進める。2001年からエコミュージアムもろつか館長を兼任し、観光協会直営事業や都市との交流による村づくりに携わる。2004年には諸塚村森林認証研究会の事務局の一員として、日本で初めての村ぐるみのFSC森林認証取得に関わる。

特別講演・パネリスト  戸塚 元雄(とつか もとお)氏      1939年生

神奈川県横浜市に生まれる
香川県高松市で四国産杉材を用いた住宅を中心に設計活動を行う建築設計士。高知県嶺北地域を対象に、四国の山の木をまちに受け渡すシステムづくりに取り組み、「NPO法人木と家の会」設立に関わる。会長を2期つとめた後、2006年に国産材プロデュースのための「木庸社」を設立。規格材普及のためのセミナーを各地でこなしている。

パネリスト        小椋 清市(おぐら せいいち)氏     1950年生 

有限会社 小椋住宅代表取締役 「生地の家」職人'ネットワーク代表
森林・木材認証フォーラム九州実行委員会会長
昭和60年、一級建築士。昭和61年、小椋住宅一級建築士事務所を立ち上げ独立。平成7年、有限会社小椋住宅設立。平成4年、バリアフリーデザイン研究会入会。平成9年、諸塚村産直住宅の建築を手がけ始める。平成17年、「生地の家」職人'ネットワークを立ち上げ代表に就任。平成18年1月、FSCの流通認証CoC認証を「生地の家」職人'ネットワークで取得。

パネリスト        水田 和弘(みずた かずひろ)氏     1960年生

株式会社ミズタホーム代表取締役 「生地の家」職人'ネットワーク幹事
森林認証された無垢の乾燥木材を使用し、土壁や珪藻土などの自然素材を多用する「呼吸する住まいづくり」を手がけている。平成17年「生地の家」職人'ネットワークの立ち上げに参画し、翌18年1月には、FSCの流通認証CoC認証を「生地の家」職人'ネットワークで取得。
自然の材料をふんだんに使用した独特の「暮らしのデザイン」が支持を集めている。

コーディネーター     松下 修(まつした おさむ)氏      1955年生

松下生活研究所 代表 「生地の家」職人'ネットワーク事務局長
農林水産業の再生支援を通して、人と自然が調和したライフスタイルや、地域づくりをプロデュース、地方自治体・企業・店舗のコンサルティングを手がけている。「生地の家」職人'ネットワークのFSC/CoC認証取得を支援。
SGEC『緑の循環』認証会議の登録コンサルタント。


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