椎茸はきのこの一種です。きのこは菌類の一種で約20億年前に地球に生まれました。菌はバイ菌たどの有害な細菌類から酵母、きのこまでいろいろな種類がありますが、椎茸は人体に有益な椎茸菌で全体が作られています。 椎茸菌はかびの仲間で、クヌギやコナラの材内で菌糸をつくり、リグニンやセルロースを分解し、これを栄養として呼吸、生長します。生長した菌糸は一箇所へ集まって塊となり、この塊が一定の条件に合うと性分化してきのこになります。このようなかびの仲間を担子菌類と呼んでいます。 きのこが増殖するためには、きのこの子である胞子が、きのこから飛び出して、他の胞子と交わることによって成立します。しかし、どんな胞子とも結びつくというわけではありません。人間と同じように胞子も性があって、やはり異性同士でないと結婚できないのです。きのこには性が二つあるものと四つあるものがありますが、椎茸は四つの性(四極性)です。椎茸の傘の裏側のひだから小さな棒が無数に出ていますが、その棒の先にこの四つの性の胞子が二つずつ二列に並んでついているのです。この胞子は互いに飛び出す時期が異なって順番に飛散するようになっています。成熟した胞子はそれぞれ時をかえ、方角をかえて、風に飛ばされ、上昇気流に乗って空に舞い上がります。いよいよ、椎茸の結婚への旅立ちです。
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菌を食べたり菌によって作られた食べ物のことを菌食と呼びます。 私たちのみじかな菌食としては、しょうゆ、みそ、漬物、納豆のほか、パン、チーズ、ヨーグルトなどが知られています。飲み物の代表選手では、日本酒やビール、ワイン、ウィスキーなどがあります。これらは乳酸菌とか、こうじかびと呼ばれる細菌やかび菌の働きによって作られた食べ物で、独特の風味が特色です。 ところが、これらの菌食と「きのこ」の菌食とでは大きな違いがあります。それは菌の働きの作用の結果できた食物と、「菌自体を食べる」違いです。椎茸は、菌だけでできている、ただ一つの菌食です。 自然林の土壌に含まれる多量の有効成分が、椎茸の菌糸や胞子全体に含まれ、その菌自 体をそのまま食べられること、風味が優れていること、人工栽培が進んで大量生産ができ、 求めやすいことから、椎茸は「菌食の王様」と呼ばれています。 椎茸は栽培が難しく、ようやく1900年頃(明治33年)になって、科学的に改良される様になりました。それは、人工的に胞子を接種したり、種木を埋めこむ方法で、その発明により椎茸栽培は飛躍的に進歩しました。 現在では培養された菌糸を接種するようにようになり、四季を通じて安定して生産できるようになりました。
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椎茸は採取する時期によって一般的に冬魔ニ香信の二つに大きく分けられます。また、大きさ、形質、発生期の気象、かんきょうなどから見て、冬魔ニ香磨iつぶし)などがあります。 <どんこ> 若いうちに採取されて胞子をいっぱいもった高級品 冬○は主として晩秋から初冬、早春から中春に発生し、しいたけの傘がまだ5〜6分開きの状態にある丸々としたものを言います。冬魔ノは花冬磨i天白冬磨A茶花冬磨jや石冬と呼ばれるものがあります。歯ざわりがしっかりしていて肉厚のため、じっくり煮込む料理に最適です。 <こうしん> 一般的に食用に多く使われている 香信は初秋から中秋、中春かに晩春の比較的気温が高く、降雨のある時生長したもので8〜9分開きの薄肉のものを言います。香信は歯ごたえがしなやかで、傘が広く薄手ですから。さっといためるような料理に適しています。
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椎茸のうま味の秘密は、5'―グアニル酸です。このうま味成分にりんご酸、各種の糖類などが含まれ、独特のおいしさができあがったわけです。おいしさの成分は傘のほうに多く含まれています。乾椎茸に含まれる核酸、5'―グアニル酸の量を維持するために、水もどしはなるべく低温で、3〜5時間かけて行います。 乾椎茸ばかりでなく、お茶、のりなど乾物保存庫には冷蔵庫が最適。 水もどしの後で加熱すると、不思議なことに5'―グアニル酸が増えます。
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私たちを引き寄せる乾椎茸特有の香りの正体は、レンチオナンというものです。これは、椎茸に多く含まれているレンチニン酸が乾燥する過程で、酵素が働き、レンチオナンという物質に変化したものです。 椎茸は、だし、味、香り、どれをとっても日本料理に不可欠な食材です。
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椎茸の誕生は今からおよそ一億年前の白亜紀といわれ、原産地として、台湾の新高山、ニューギニアのスカルノ峰などがわかっています。この原産地から風に乗った椎茸の胞子が中国や日本に飛んできたのです。椎茸の増殖に適した地域は九州の祖母山を中心とした宮崎、大分、熊本、あるいは四国、静岡、北海道の帯広原野でした。これらの地域には椎茸の胞子を結びつける都合の良い気流があったからです。 椎茸栽培は江戸時代から盛んになりました。椎茸がオランダ、ポルトガル、スペインなどの外国貿易に使われて、藩の財政を潤したことから、その価値は高く珍重されました。そのため椎茸栽培に成功した者は大いなる尊敬を得ることになりました。しかし、当時の栽培はどこから飛んでくるかわからない椎茸の胞子を原木に根付かせるような、神頼みの栽培方法でした。
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漢方の本家・中国は昔から椎茸を不老長寿の妙薬として用いてきました。今から約600年前、明時代の呉瑞という医者は、「しいたけは身を益し、飢えず、風を治し、血をやぶる」と説いています。これは、椎茸が「スタミナがつき、健康食として好適'で、万病のもとの風邪に効き、血行を良くし、血液中のコレステロールを低下させる」ということを言いあてたものです。現在では、これらの効用も科学的に分析され、多くの部門を解明しています。 1964年 金田尚志氏 椎茸の結晶コレステロール低下作用発表 1967年 鈴木慎次郎氏 椎茸の血清のコレステロールへの影響発表 1968年 千明呉郎氏 椎茸の多糖の抗ガン作用発表 1969年 石田多香雄氏 椎茸胞子中のインターフェロンの抗ビールス因子発表 1972年 松岡憲固氏 椎茸のくる病退治研究発表 1978年 国立栄養研究所 椎茸小粒冬魔フ高血圧効用証明 1982年 森寛一氏、他 椎茸の制ガン効用発表 1986年 松田重三郎氏 椎茸のレンチナンのエイズ効果発表
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<健康を維持し、病気を予防する「しいたけ」の効きめ> 血行を良くするしいたけの働きは、疲労回復に特効があり、タバコの害を防ぎ二日酔いを残しません。しいたけの中のビタミンでスタミナがつき、顔のシミやクマ、吹き出物など美容効果をもたらします。 <ウィルス退治に役立つしいたけの成分・レンチナン> ●風邪、水ぼうそう、癌の予防 <コレステロールを下げる成分をもつしいたけ> ●高血圧、腎疾患、胆石、胃酸過多、胃かいよう、糖尿病、 <冷え症、不眠症、便秘、痔の治療> ●ビタミンB1、B2、B6、B12、D1を含む優れた菌食 くる病、貧血、角膜炎、皮膚病、水虫、アレルギー性に特効
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