作品発表にあたって

　この度、知名度もなく極めて未熟者の私が身の程を弁えず、ささやか乍ら個展を開くにあたって、私の絵を鑑賞して頂く方々に一言お礼と御挨拶を申し上げます。

　幼い頃から絵が好きだった私が初めて油絵を手にしたのは２３才だったと思います。会社の先輩が「絵が好きなら」と、使わないでいた油絵具を私にくれた事から遊びで始めたのがおもしろくて、全くの我流乍ら細々と描き続けてきました。十数年前、ある人との不思議な出会いがあって、強烈な個性を持つその人の熱心なすすめと、その人により芸術に関して多くの事に開眼させられ事もあり、以来その人の期待に応えたい一念で今日まで絵を描いてきた次第です。その間、迷いや自信喪失に陥ったり、暗中模索の日々でした。しかし、その時々に大きく支えてくれたのもその人でした。その他にも鹿児島大学のある教授のアドバイスにより、アンドリューワイエスという画家を知り得た事は私にとって自信となり、その事で曲がりなりにも今の自分のスタイルを肯定する事が出来る様になりました。

　昨年は、田舎暮らしに不相応ながらモデルを引き受けて頂く女性と出会うチャンスに恵まれ、一年間で四点制作の目標を立て、どうにかその仕事を成し終える事が出来ました。そして、やがて日本を離れるそのモデルの女性に対して私の出来る唯一のお礼は絵の発表を以ってする以外にないと考え、この度展示会を企画致した次第です。

　モデルを引き受けて頂いたアンニャさんには、作品の一つ一つのモチーフを十分に理解して協力頂き、大変助かりました。あなたとの出会いがなければ描かれる事もなかった四点の絵が、評価はともかくも残った訳ですが、あなたが遠く日本を離れた後もいつまでも若く美しく静かに息づいて輝き続けると思います。私に一年間絵を描く事のよろこびを与えてくださいました。深く感謝すると共にあなたのこれからの素晴らしき人生を祈念し新しい門出を心からお祝い申し上げます。

　最後になりましたが、私の拙い絵をわざわざ見て頂きました皆様に心底より御礼申し上げます。私の絵は誰もが同じように心に感じる情緒性を極めて平明に直感的な捉え方で描いたつもりです。何かを感じとって頂ければ幸せに思います。
　ありがとうございました。　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平成１７年７月奈須　隆生